妊娠・出産と甲状腺
① バセドウ病の治療と妊娠
治療していないバセドウ病では流産や早産の危険が増加することが知られています。その一方、バセドウ病で治療中の方が妊娠した場合、妊娠中期以降ではバセドウ病の程度が軽快することが知られています。そのため、バセドウ病で治療中の方が妊娠を希望される場合は、前もって内服薬の種類の調整が必要となります。内分泌専門医のもとで、しっかりと治療を受けられている場合、抗甲状腺薬を内服しながら妊娠しても問題ありません。
② 妊娠初期の一過性の甲状腺ホルモン過剰症
妊娠8週から12週に一過性に甲状腺ホルモンの過剰症状がみられることがあります。これは、胎盤由来のホルモン(hCG)が、甲状腺を刺激して甲状腺ホルモン合成を促すためと考えられています。なかでも、つわりの強い人でしばしばみられます。基本的には一過性の異常のため、そのまま経過を観察すればよいと考えられています。
③ 甲状腺の機能低下と妊娠
近年、甲状腺機能の異常と妊娠のしやすさに関連があることが分かってきました。とくに、甲状腺の自己抗体が存在し、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が正常範囲内でも高め(2.50以上)といった(軽度の)甲状腺の機能異常を合併するかたの場合、甲状腺ホルモンを補充することで妊娠率が上がることが示されています。
不妊、流産でお困りの方は、一度、甲状腺機能、甲状腺自己抗体の検査を受けられることをお勧めします。
④ 出産後の甲状腺機能異常
出産後は甲状腺の機能異常が増加することが知られています。実に、出産後の女性の20人に1人で甲状腺に何らかの異常が認められます。
甲状腺ホルモンが増加する場合もあれば、低下する場合もみられ、そのため、症状はきわめて多様です。出産後、動悸がする、暑がりになり、水をよく飲み、汗をたくさんかく、イライラしやすくなった、落ち着きがなくなった、
体が冷え、寒がりになった、疲れがとれない、食欲が無いのに、太ってきた、便秘しやすくなったなどの症状がみられる方は甲状腺のホルモン検査をお勧めします。
二次性高血圧 ―根治可能な高血圧―
二次性高血圧とはホルモン、腎臓、血管などの病気により、血圧が上がる疾患で、もとの病気を治療すること根治可能な疾患です。
近年、高血圧全体のおよそ5-10%が二次性高血圧であることがわかってきました。とくに、二次性高血圧の中で腎血管性高血圧、原発性アルドステロン症、褐色細胞腫などの疾患はホルモンの異常により発症し、的確に診断することで血圧が正常化し、高血圧の治療薬を飲む必要がなくなる場合もあることが知られています。
一方、通常の高血圧治療で血圧がなかなか下がらないかたの中に、二次性高血圧の方が多いことも知られています。
当院では、内分泌学会認定 内分泌代謝内科専門医、指導医(専門医を目指す医師を指導する医師)である院長が、通常、大学病院などで行う二次性高血圧のスクリーニング検査を、外来で速やかに施行しています。