脂質異常症とは
脂質異常症(高脂血症)というのは、血液中の脂質、具体的には「コレステロール」や「中性脂肪(トリグリセライドなど)」の濃度が慢性的に高いあるいは低い状態のことです。
脂質異常症には、大きく分けて次の3つのタイプがあります。
- 高LDLコレステロール血症
- 高トリグリセライド(TG)血症
- 低HDLコレステロール血症
脂質異常症を放置すると、増えた「悪玉」脂質がどんどん血管の内側に溜まって動脈硬化*の進行を促し、ついには心筋梗塞や脳梗塞を引き起こします。
また、高血圧等と同様に自覚症状が無いため、健康診断などの機会を利用して、早い段階で見つけることが大切です。
*動脈硬化とは
動脈硬化というのは、心臓から体の各部分へと血液を運ぶ血管が硬くなる疾患です。動脈の内壁にコレステロールが溜まり、血管が盛り上がって狭くなり、それとともに血管が硬く、そしてもろくなるのです。そのため、血液の流れが悪くなったり、盛り上がった部分が破れてしまい、中の脂質と血液が混ざることで血栓(血のかたまり)ができて詰まってしまったりするのが大きな問題となります。
高脂血症は動脈硬化の危険因子
狭心症や心筋梗塞等を含めた心臓病と、脳出血や脳梗塞等の脳卒中は、日本人の死因の上位を占めています。これらはいずれも主に動脈硬化が原因となって起こる血管病です。死因の第1位はがんですが、心臓病と脳卒中を合わせると総死亡の約3割を占めるので、動脈硬化を防いでこれらの疾患を予防することは、生命維持にとっても重要です。
さらに動脈硬化は、高血圧を悪化させ、腎臓病などの原因にもなります。
動脈硬化は年齢と共に進行しますが、ほかの様々な危険因子によって進行がさらに速められます。高血圧が動脈硬化の大きな危険因子の一つであることはよく知られていますが、実は脂質異常症も同様に重大な危険因子です。
そのため、自覚症状がまったく無くても、脂質異常症は、早期に治療を始めることが大切です。
脂質異常症の治療
脂質異常症の治療の3本柱は、他の生活習慣病と同様に、食事療法、運動療法、および薬物療法です。
なかでも特に重要なのが食事療法であり、これは適正体重の維持とも深く関わっています。実際の食事療法では、高LDLコレステロール血症の人は動物性脂肪を含む食品を減らして植物性脂肪を含む食品を増やす、コレステロールを多く含む食品を減らす、野菜やきのこ類などの食物繊維を多く含む食品を積極的に摂る、高トリグリセライド血症の人の場合は糖質の多い食品やお酒を控える、摂取エネルギー(カロリー)をコントロールする、などを心がけます。
運動療法は、ウォーキングなどがお勧めです。こうした軽めの有酸素運動を続けると、トリグリセライドが低下し、HDLコレステロールが増加します。
脂質異常症の治療薬には、主にLDLコレステロールを下げる薬や、トリグリセライドを下げる薬があり、医師は個々の患者様に適した薬を処方します。薬の効果をしっかり出すために、また副作用を防止するためにも指示通りにきちんと服用しましょう。